9ばん 『真夏の果実/1992檸檬』 和菓子工房「吉野」の山川さん

 車のラジオからサザンの曲が流れてきた。 印象的なイントロが、忘れていた、あの夏を
 呼び起こす。
 海岸通りのあの喫茶店は、あの時と同じようにやっているだろうか。
 いつもフレッシュジュースをたのんで、おいしそうに飲んでいた君。 桃のような頬を薄紅に
 染めて、大好きなサザンのアルバムの話をしていた君。
 誕生日プレゼントに、はにかみながらチェックのシャツをくれた君。 何年も逢ってないけれど、
 元気ですか。
 君が、君自信の手で届けてくれた暑中見舞いの 涼し気な檸檬のフォトカードは今も部屋の壁
  に飾ったままです。
 一瞬の追憶をかき消すように信号が青にかわった。
 真夏のような7月の日ざしをあびながら、配達先へと車を走らせた。
8ばん 「夏みかん」 本多さん(神奈川県)

 5月の連休に伊豆の湯が野に行きました. 高校生の頃、川端康成の「伊豆の踊り子」
 に憧れ、 文学部に入ろうか、と真剣に考えたこともあった所 なのです。
 3日の午後1時過ぎに民宿に着き荷物を預け、早速  「踊り子の道」に向かいました。
 ゴールデン・ウィークにも拘らず、天気のよくないこともあり、 湯が野は閑散としていま
 した。
 河津川にかかるつり橋を渡り、出荷で忙しい甘夏の木を見ながら  「踊り子の道」を
 妻と歩いていますと、前方から一人のおばあさんが 大きな夏みかんをひとつ両手で
 大事に持ちながらやってきました。
 そのおばあさんは私たちを見ると、にこり、とほほえみ近づいて 来ました.そして「今、
 畑から採ってきたんだ。」と言い、その夏みかんを 私たちに下さいました。
 殺伐とした都会に住みなれている私たちには、このような人の優しさは 長らく忘れて
 いたことでした。  このひとつの夏みかんは、湯が野の温泉以上に私たちのこころを温
 めてくれま した。
7ばん 「ゆめのイチゴ狩り」 ちゃんたさん(福岡県)

 この地に越してきて、1年経った。 大好きな苺が結構安く売られているので、八百屋へ
 行くたび、苺を沢山買う。
 3歳の娘も苺が好きなので、買い物へ行くたび、せがまれる。 食べきれない程買ったと
 きは、ジャムにする。
本当に苺づくしの毎日だった。
 ある日主人が、「明日イチゴ狩りに行こうか」と、声をかけた。 その日も2パック程買いこ
 んでいたので、ちょっと躊躇してしまった。
 交通費や入場料など払うと、買ってきたほうが遥かに安いのだ。 結局天気が悪く、イチゴ
 狩りは断念したが、一度娘に苺畑で好きなだけ食べさせるのも、いいかも。 と、今更なが
 ら思う。だが、もう苺の季節は終わってしまった……。
 来年こそ、連れていってあげる。──ゆめのイチゴ狩りへ。
6ばん 「難を逃れたイチゴ」 popperさん(青森県) 2作も応募ありがとうございます 清

 数年前、息子が学校で育てていたイチゴの鉢を持ってきた。試しに庭に植えたら、
 増えるは増えるは。立派な実もいっぱいつける。ところが土の上に単純に植えた
 もんだから、虫にかじられるは、鳥につっつかれるは、強い雨で泥だらけになるは
 で、ほぼ壊滅状態。
 それでも丹念に探すと、難を逃れたイチゴがほんの数個見つかる。
 小さな皿に、洗った難を逃れたイチゴをのせて食べてみようとするが、なんとなく
 もったいなくて食べられない。それが食卓にデンと構えて2,3日たつとしぼんでくる。
 慌てて食べるとすっかりみずみずしさが無くなっている。
 これを2年続けてしまった。
 今年はさすがに反省してプランター2個に移植した。これで、立派な実をもっといっぱ
 いとって、獲れたてをたっぷり食べようと思っている。
5ばん 「黒ずんだバナナ」 popperさん(青森県)

 何故か、我が家の食卓の菓子鉢にはいつもバナナがある。それがどんどん黒
 ずんでくる。
 もったいない世代の私が、しょうがなく食べる。ところが次の日帰って来ると、何
 故かまたバナナが鎮座ましましている。
 どうも妻は子供たちがバナナが好きで、おやつがわりに食べていると思っている
 らしい。確かに小学生の時代はそんなこともあった。
 しかし、最近は娘、息子ともにバナナを食べているのを見たことがない。習慣と
 いうのは恐ろしいもんだと片づけるのは簡単だが、それにしても、いくらなんでも、
 気づいてもよさそうなもんだ。なんせ、もう大学生と高校生なのだから。それを言
 わない私が悪いんだろうか。
 このまま言わないと、黒ずんだバナナという風景がいつまでも続くような気がする。
 ひょっとして、子供たちが我が家から一人もいなくなっても続くんだろうか。
4ばん 罪なサクランボウ 古田 光明さん(和歌山)

 毎年この時期になると、私の心は落ち着かなくなります。
 チラシや雑誌にサクランボウ狩りのツアーの情報が出てくるからですが、何年前か
 忘れましたが、贈答で頂いたことがありました。
 その時から虜になってしまいました。しかし、産地は山梨や山形など遠隔地です。
 そうそう行くことは出来ません。仕方なく我が家で栽培することを思いつき、苗木を
 購入して素人ながら育ててみました。
 3年くらいたって初めて食べることが出来ましたが、それは私が以前に感動したのと
 は大きくかけ離れていました。暖地用のサクランボウでした。
 涼しい地方でないと病原菌がついて枯れてしまうとのことで、私が望んでいたのは無
 理でした。努力も空しく終わりました。
  この時期になると店先にも並び始めますが、輸入物には全く心が動きませんが、き
 れいな大粒の美味しそうなのを見ていると、よだれが・・でも、高いのは経済的なこと
 もありたくさん食べれませんし、新鮮味がないような気もします。
 従って、食べ放題のツアーにどうしてもあこがれてしまうのですが・・・
 今、42歳ですが何歳になったら、腹一杯食べれるのか?いつかは叶えたいささやか
 な夢です。この夢が実現できたなら、胃腸があまり強くないのでおそらく、お腹を壊す
 でしょうが、一生の想い出になり、満足して死ねると思います。和歌山ではなく、
 静岡や山梨に生まれたかったよ〜
3ばん 半分のりんご 永田純一さん(青森県)

 半分のりんご
 「あっ、りんごだね。」と言う。発見でもしたように。もう、一緒になって23年もたとう
 としているのだから、遠慮なんか無くなりそうなものだが、そうではないんだな。
 君は、毎朝半分のりんごの皮をむいてくれる。それが僕の健康を支えているのだと
 信じている。それなのに、自分がそう思い、そうしていることが、恥ずかしい。
 僕が望んでいるからそうしているというポーズをとる。だから「あっ、りんごだね。」
 と言う。僕は僕で、「ウン」としか言わない。明日は、残りの半分がむかれることを、
 二人ともよく知っている。僕の健康は、半分のりんごをむいてくれる君の照れくささに
 支えられている。
2ばんのつづき 我が家の果物のなる写真! deivyさん
  

 鳥達は早起きで、日が昇る頃には食事を済ませており、
 すっかり赤らんだやつから、ゴチになってしまって、電線
 から見下ろして、のこのこ起き出した僕を笑っていた・・。
 でも、ご覧の通り、食べ残しもあったのサ!                
 
2ばん 我が家の果物のなる風景 deivyさん

 5月が始まり、我が家の庭も緑があふれてきました。その緑の中に果物たちの
 息吹が・・・。
 サクランボが赤みを増してきてあと数日で食べることができそうです。
 鳥たちとの競争になります。負けるもんか!
 ビワの実も今年初めて膨らんできました。りんごの花も咲いてます!今年こそ実が
 膨らんで欲しい。がんばれ!でも梨の花は今年も実を着けませんでした。
 ラズベリーも雑草のように増えて、花から実へと移りつつあります。
 隣でブラックベリーがくやしそうに葉っぱを繁らせてます。
 温州ミカンもレモンもネーブルもつぼみが膨らんで来て、柿もつぼみの息吹が感じら
 れます。山桃は今年は実を着けていないみたい・・・。
 この10年、何の脈絡もなく、実の成る樹を植えまくり、何の世話もせず、果実だけを
 期待する我が家の"果物の成る風景"を、清コーディネ〜タ〜に負けず発信してみようかなぁ。
1ばん 「レモンのようなキス」 くまのすけさん

 本を見ると、ファーストキスはレモンの味とかいてある。
 私は、キスをした事がないのでわからない。と思ったのが15才の時でした。
 しかしそれは突然やってきました。付き合っていた彼女と公園で初めてキスをしました。
 そして頭の中が真っ白になりながらも、「これがキスか・・・」。
 レモンの味と言うより、レモンを丸ごとかじったとき、あまりのすっぱさに意識が飛ぶよ
 うな感じだ・・・・と思いました。
 それから幾度となくキスをしましたが、あのときの感覚はありません。
 多分人は初めての体験や経験したことは、良いのか悪いのか学習し、標準化してしま
 う習性があるのです。もう一度あの感覚を体験してみたい・・・そう思った私でした・・・。